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シェフインタビュー No.22

顧客の反応が自分を成長させてくれる -尾長知幸シェフー

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子供の頃はどんな子でしたか?

アクティブな子供でしたね。小学校から高校まで野球をやっていたくらいなので、基本的に外で鬼ごっことかドッジボールとかアスレチックなことをして遊んでいた想い出があります。地元も厚木の森の里という田舎の方だったので、外で遊ぶことが多かったです。

当時は料理に関しては全く何もやってませんでした。料理人を志したのは26歳、今から5~6年前です。

食に対するこだわりも正直全くなかったのですが、母親が作る料理がおいしかったんです。だから友達が毎週のように遊びに来て、ホームパーティーまではいかないけど、楽しく一緒にご飯を食べることをよくしていました。そういうコミュニティーが好きだったというのはよく覚えてますね。

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料理人になるまではどんなことをされてましたか?

高校卒業後は、専門学校にいくつか行きました。一時期とび職をして学費をためたこともあります。昔から洋服がすごく好きで、文化服装学院を卒業した後、スタイリストとして働きました。2~3年かかりましたが、食べれるようにもなりました。

ただ、いざ仕事として見ると、正直自分が思っていたクリエイティブな仕事というよりは地味な作業が8割くらいだなと感じてしまったんです。これをこのままやるのか?と考え、続けるイメージがわかず、少し無計画ではありましたが、辞めて、カフェで働くことにしたんです。

カフェで働こうと思ったのは、かっこいいコーヒー作りたい、お酒作りたいという気持ちでしたが、キッチンスタッフがいない、ということで気づいたらキッチンに立つことに。。

正直いやでしたよ。かっこよくないし(笑)でも、やってみたら意外に楽しかったのと、ラフなカフェだったので、自分発信で何でもできたんです。それで料理に興味が沸いてきて、少しやってみようかなと思ったんです。魚屋でも働きました。動機は魚がおろせなかったことです。

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修業時代に大変だったことを教えてください。

最初は何もやらせてもらえませんでした。野菜を切るなどのキッチンの中での仕事ではなく、セッティングとかホール側のサービスを最初の1年くらいやらされ、それが何の意味があるのか、今になったらすごい意味のあることだというのがわかるんですが、当時はそこがすごくきつかったですね。

しかし、ある時自分が理想とする料理人と出会い、料理への気持ちが一層強くなりました。食材に対して、お客様に対して、そしてスタッフに対して!僕が理想とする料理人がそこにいました!料理はもちろん抜群においしくて感動したのを今でも覚えています。

それと、2軒目に働いたお店のシェフ、スタッフの志が本当に良かったんです。バルみたいなイタリアンなんですが、都内で4、5店舗、個人経営のお店で、スタッフ想いだし、お客さん思いだし、お客さん目線で全てやっていながら利益もちゃんと出してる。そこは、おもてなしの気持ちに気づかせてくれて、この仕事をちゃんとやりたいなと思わせてくれたお店でした。

その店での体験が料理人としての喜びにもつながっているし、そこがなかったらたぶん料理人を目指してないでしょうね。例えば自分の誕生日にシェアハウスのメンバーが全員来てくれたりとか、人のお祝いの際に飲食店、食事が素晴らしい時間を提供できるんだということを実際に体験し、その体験というものを続けていきたいと思いました。

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お肉のイメージが強いですが、お魚のお店で修業されてたんですか?

前菜にカルパッチョというのがあるんですが、自分で魚をおろすことができず、すごく悔しかったんです。先輩にやってもらうのがすごく悔しかった。耐えられないくらい。。だから単純に魚をおろしたい、の一心でした。魚おろせない料理人も結構いるようだったので自分の強みになるのではないかと考えて働くことにしました。

ただ、出張料理ではお客様ニーズとしてお肉の方が多いというのと、出張系で魚の提供がなかなか難しいというのが現在お肉中心になっている理由です。

出張料理始めるにあたって、実はお肉は鬼門でした。お店では、肉をなかなか担当できなかったので、最初は自信があまりなかったんです。自分で無駄に買って、焼いて、食べて、食べきれない分は冷蔵庫に入れて、という感じで、ひたすら肉を焼くことを繰り返しました。本見て、Youtubeを見て、他には以前の職場のシェフと仲がいいので、単純に聞いたりとかを繰り返したんです。でもやっぱり実践が一番でしたね。出張料理を始めてから100キロ以上焼いていると思いますが、積み重ねで今は肉は焼けるという自信がつきました。

それと何よりお肉大好きです。今日もイベリコ豚塊3キロくらい仕入ました。好きだから研究もするし、仕入れ先も拡大していきます。お肉業者の方から声をかけてきたり、友達がこんな肉あるよ、使ってみてよと回してくれたりとか。好きだと自分から言うのが大事だと思ってますね。普段から自分がお肉を食べているし、肉加工はベーコンだったりソーセージだったりパテ、レバーペーストだったり、自分の中でもレパートリーが多く自信を持って出せるものが多い食材です。

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出張料理を始めたきっかけは何ですか?

以前のお店が完全にクローズキッチンでした。お客さんがどういう感じで食べているのかが全く見えない環境です。でも反応を直に感じたかったんです。どういう笑顔で食べているのか、直接感想をもらいたい、そう考えたんです。なので、オープンキッチンのお店で働くか迷いましたが、お客様、人ともっと関わりたいというのがあって、出張料理を選びました。

不安は正直ありました。綿密な計画を立てていたわけではないので。たまたま辞める直前に出張料理という仕事を知り、たまたま辞める直前にケータリングの仕事が入るということが重なり、たまたま始めたという流れでしたから。

でも、将来的にお店を出したいという気持ちはあって、そのために自分の力を試してみたいな、ということはずっと考えていたんです。そのためには最高の環境になるというのは感じましたね。

出張料理の楽しいところは、おいしかったら、食べた瞬間おいしいって言ってもらえるところです。極端な話、その日に次の予約が入ったりもします。手ごたえが一番わかりやすいんです。夜の提供だと、終わった後にゆっくりと話をしたりなど、人との関わりがいろいろと増えるのが魅力ですね。

逆に大変なところというのは、初めてのキッチン環境に対応ができないことですね。家ごとに全然違う環境ですから。行って、実際はこんななの?みたいのがあるので、いかに対応するかが大変です。

拘っているところとしては、着いてから提供までの時間です。出張料理始めたばかりの時は1時間前くらいには会場に行ってましたが、今は人数少ない時は15分前で十分なんですね。

行ったら、すぐに前菜を出して、それを食べていただいている間に、例えばソーセージとかお肉とかパスタという温かいのを徐々に仕上げていく。それは理由があって音とか匂いでお客様はおいしいと感じたり、ライブキッチンに魅力を感じてくれているので、着いてからの時間を長くしすぎないようにしてます。お客様との調整にも寄りますが、今はほんと30分以上前には入らないです。

そこもプロだと思ってやっているんです。いかに手早くできるか、を重視してます。プロとしての作業で、短時間で提供できますよ、という安心感を持ってほしいんです。

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これまでの失敗談教えてください。

青山のIT系企業から100名の仕事が入ったことがありました。100名規模は初めて。現地視察をしに行き、環境的にはできる、という感触を得たんです。コンロが6口くらいあって、これならいけると。

でも当日いざ現場行ったら、正直今思うと準備不足というのがありますが、会場にあったコンロがIHだったんですが、それほどそれまで使われてなかったため、行って30分くらいで火がつかなくなり、肉を焼けなくなりました。もちろん料理も出せませんでした。

顧客側の担当者は事情を理解してますが、人数も多いこともあって、他の人たちは理解できないじゃないですか。

「まだですか?まだですか?もう終わりですか?」

という声が90人くらいから聞こえてくる。まじ耐えられなかったですね。今考えるといろいろとできたかもしれないんですが、その時はテンパってしまって、助っ人も何人かいましたがが、カセットコンロを調達というアイデアも出てこなかった。

その大失敗をした後は、車をかまえて、カセットコンロを常に2、3個持っておくとか、緊急の時にも対応できるようにしておくようになりました。特に大きな現場の時は注意してます。100人規模であればマックスのスピードでやっても間に合わない。考えが甘かったです。

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お店と出張料理でスキル的、働き方で違いはありますか?

自分自身のマネージメントをしなくてはならないところはあります。でも、逆に平日会いたい人に会えたり、自分でやりたい料理ができるというのが出張料理をやっていて素晴らしいところだと思います。お店だと店のメニュー、決まっているメニューを作らないといけないですから。

スキルが上がるのって、やはり何か自分の中から生み出した時なんです。試作です。お店で働いていると、全てが終わってからでないと試作ができない。前の店は忙しかったので、なかなか試作までたどり着けず、作業的になっている部分が強かったです。今は自分がやる気さえあればどんどん新しいことに挑戦できたりとか、楽しみは格段に増えましたよ。

新作のインスピレーションは、料理本とか、ネットで調べたりとか、旬の素材同士を自分なりに組合わせて試してみたりとかします。失敗も多くあるけど、いろんな本から自分の頭の中から、ネットから、前のシェフに聞いたりとか、聞くことに対してプライドが何にもないので、いい料理人がいて、おいしい料理があったらどうやってるんですか?と聞いてしまいますね。いいものであればどこからでも持ってこようと、そういう考えで、まずはやってみようという考え方です。

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出張料理人という働き方をキャリアパスの中でどう位置付けてますか?

3年後くらいにお店を持ちたいと思っています。それを踏まえてになりますが、出張料理人を始めてから思ったのは、ファン作りをできたらないいな、ということです。また、それまでの間に様々なことに挑戦する場所にもなっていると思いますね。

それは接客面でも同じだと思います。出張料理を始めた当初はあまり感じなかったんですが、3、4か月目からコミュニケーションを意識しだしてからは、お客様との距離が近くなりました。それによって、自分の仕事をよりわかってもらったり、リピートにつながりやすかったりするようになりましたね。料理以外のお客様とのコミュニケーションが顧客満足度を高めていることを実感してます。正直すごい職人さんは向いてないと思う。レストランだったら、洗練されたサービスはホールの人がやってくれて、料理人はめちゃくちゃおいしい料理を作ることだけで仕事が成り立ちますが、出張料理人はすごいおいしい料理を作れるだけだと成り立たないんです。

例えば、この豚は、こういう豚で、こういう水を飲んで育っています、だから油が他の豚に比べて甘くておいしいとか、この野菜は湘南から持ってきています、といった食材のエピソードがあるとお客様はおいしいと感じるとか、すごいよく聞かれるのが、料理どれくらいやってるんですか?とか自己PRとかも軽く、笑顔で話ができたら、その場のスパイスとして変わってくる。コミュニケーション能力の重要性は途中から非常に感じるようになりましたね。

お客様と話ができるようになってから成長速度も速くなったと感じてます。急にというか。仕事もそれくらいから楽しくなったんです。成長とともに仕事も来て、意欲も出てきた。独立直後の2、3か月はつらいとよく聞きますが、それは本当でした。ただ、それを乗り越えると段々楽しくなってきましたね。もし今出張料理人に興味を持っている人は、まずはやってみていただくといいと思います。

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これから出張料理始めようと思っている人へのメッセージをお願いします。

出張料理人はまだまだ認知が少ないですが単純に面白い仕事だと思ってます。自分の力を試せる場であり、お客様の声が一番聞こえる仕事。オープンキッチンよりもはるかに反応がわかりやすく、うれしさも伝わってくる仕事。やりがいはすごいあります。

その分責任が自分に来ますが、もっとお客様と話したいという料理人はまだまだいると思うんです。そこの1ステップ目としてやってみたいと思うのであれば、プライムシェフに登録して1回味わってもらうのもてみるのもいいのではと思いますね。

やってみると人脈つながってきます。料理人のコミュニティーは横のつながりが非常に大事です。仕入先の拡大やお客様情報やそのじきじきの料理の相談とかどんどんやっていくと楽しくなっていくので、お勧めの仕事です。