(対応時間:平日10:00~18:00)

シェフインタビュー No.21

ライブ感を求めて出張料理人に!高野恭一シェフ

Dsc 0004 2

ランチ接待に出張料理後にお話し伺いました。

若干冬の寒さが戻ってきた春先のお昼過ぎ。青山のオフィスにある雰囲気抜群のキッチンで、ビジネスランチ接待に出張料理を行っていただいた後に、高野恭一シェフにお話を伺いました。

出張料理人が家までやってくる時ってどれくらいの荷物でやってくるんだろう。そんな疑問を持つ人もいるかもしれません。この日は4名様分のご提供でした。この大きさでだいたい6名様くらいまで対応可能です。人数が増えた時は、子スーツケースの上に鞄を乗せて運んだりもします。

写真では、カジュアルな服装ですが、一旦キッチンに入ると、コックコートに着替え、まさにシェフという雰囲気バリバリになります。では、インタビューをお楽しみください。

Dsc 0006 2

料理に興味を持ち、職業とするまでのことを教えてください。

子供の頃はお料理をする機会はほとんどなかったです。中学校の家庭科くらいですかね。ただ、親が食べることが好きで、外食の機会は多かったですね。ひたすらお肉を食べていた記憶があります。もちろん当時は自分が料理人になるとは思ってませんでした。

高校を卒業して、バンドをやっていました。アルバイトしながら。バンドでの担当はギターです。高校くらいから始めました。イカ天とかのブームがあった頃ですが、音楽で食べていくのは厳しいなとは思っていましたね。

バイトは飲食をやっていて、仕事として面白いなということは感じていました。また、テレビなどで本物のフランス料理を見た時にどうやって作るんだろうとか、食べたことないから食べてみたい、と思って、料理に興味を持つようになったんです。

当時は料理の鉄人が始まったくらいです。料理人は楽しそうに料理してるし、食べている人は、みんなおいしい、おいしいって言ってる。料理に関する表現がよくわからない。特にフランス料理は今まで生活している中になかったんですね。色使いやどうしてああいった料理ができるのか、という単純な興味が沸いてきて、そのまま職業にしようと思ったんです。

Dsc 0007 2

修業時代のことを聞かせてください。

ひらまつというフレンチの大手に入ったんです。ちょうどその時に代官山にリストランテaso、というところがオープンし、そこに勤務してました。すごい人気だったので、朝5時6時から夜11時、12時くらいまで毎日仕事でしたね。

週に1回月曜日が定休日でした。でも丸1日休んでしまい、火曜日の朝何時に行ってもその日のランチに間に合わないんです。なので、月曜日に内緒でお店に行って、仕込んでおきます。2~3時間仕込みをやって、それでも火曜日には朝5時くらいには行くんです。それでやっと火曜日のランチに間に合うくらいでした。

単純に作らないといけない量が多いというのもあるんですが、手間がかかるんです。仕込みを間に合わせる、それが一番下っ端の仕事だったんです。特にやれと言われたわけではないんですけど、やらないと間に合わないというのがもう明らかでしたし、できてないと怒られるんです。そこはやはり厳しかったですね。

17474454 1413600975329675 333867217 o

その後フランスに留学されたんですか?

ひらまつでは4年半くらい働いてからフランスに留学しました。最初はパリのネオビストロで有名なお店でした。その頃流行りだしたスタイルで、コテコテのフレンチのビストロに対して、ネオビストロはカジュアルで洗練されたスタイルです。フランス語は店でのスタッフ同士の話は料理のことを話すので何となく大丈夫でしたね。フランス人の友達もできて、遊びにも行ったりしました。(写真は三ツ星シェフで、フランス・リヨンで開催される世界最高峰の料理コンクール、ボキューズ・ドール賞の創設者のポールボキューズさんと)

お店の料理はクラシックだけど、新しい。すごく人気で3か月くらい予約が取れないくらいでやはり結構忙しかった。でも単価は4,000~5,000円、安くておいしくてというレストランでした。ドリンク込でも5~6,000円で非常にリーズナブルにおいしい料理を提供していたお店でしたね。

フランスの方が働き方という点では少しマイルドでした。休憩時間も長かったです。土日と月の昼はお休み。2.5日お休みなんですね。フランスでは土日休むレストランも多いです。

行ったのが5月くらいだったんですが、8月は丸々1か月休みで、久々の夏休みを満喫しましたね。8月休むというのはパリのレストランとしては一般的です。お客さんも来ないし、フランス人はあまり8月に仕事しないんです。ホテルとかリゾートとか以外はあまり働きませんね。特に主要都市はお休みなので、旅行する時はあまり面白くないかもしれません。

パリ以外では、ワイン好きが講じて、ブルゴーニュのお店でも働きました。ブルゴーニュ地方のブドウ畑の近くのレストランでした。お休みの日には店の自転車を借りて、畑を見て回り、ワイナリーに行って、試飲させてもらって、おいしかったら、買って、家に持ち帰り、料理作って、ワインと一緒に飲むみたいな今考えると幸せな時間を過ごしてましたね。

17430948 1413600981996341 679354494 o

帰国後はどうされていたんですか?

留学は1~2年と決めていて、2年で帰国しました。帰る時は、働き場所を決めてたかというとそうではなかったんです。ただ帰ってきたら、一応報告しに行きますよね。元いた職場であるひらまつに。そうしたら、来い、って言われて、「はい」しか言えないので(笑)

それでまたひらまつで働き始めました。普通の人は中々戻る場所がなかったりするので、大変というのは聞くことがあります。そういう意味ではラッキーだったと思いますね。最近は料理人が足りないという話も聞きますが、昔は働き場所を見つけるのが大変だったと聞いてます。フランス行ったからどうだという時代ではなくなってきた時代で、留学する人も増えてた時期でしたから。

フランスに行く時も、働く場所を決めて行ったわけではなかったんです。まずは手紙を日本から書きました。当時の師匠に、人に頼るのは簡単だが、どうせ行くんだったら、自分の力で何とかしてみろ、と言われ、「はい」しか言えないですよね(笑)

ミシュランとかを見ながら手紙を何百通とか送りました。出した手紙に返ってきたのが10~15通くらいなんですけど、その返事を持って交渉しようとしたんですが、かなり難航しました。ビザの問題もありましたし、いきなり訪問して驚かれたりしましたね。

17453549 1413600988663007 1930199558 o

出張料理人としての活動はどんなきっかけがあったんですか?

帰国後はまたひらまつなどで働く中、メニュー開発の仕事を担当するなどして現場を離れた時期が続いたんです。その結果料理する機会が全くなくなりました。あるといえばありましたが、試作とかレシピの起こしとかに限定されていました。

さらに、土日休みで6時に定時で上がるみたいななんだかサラリーマンのような生活を送っていたら、なんか面白くなくなって、休みの日に、料理をするために出張料理を始めました。そうしたらどんどん面白くなり、会社を辞めて、出張料理人として活動するようになったんです。

とにかく現場感がなくなるのがいやだったんです。ライブ感が全くない。作る相手がいないというのが非常に物足りませんでした。相手がいたとしても、試作を食べる会社の上司とかで、要は身内で、いつも決まった人ばかりなんですよね。そんな生活の中で、ライブ感に飢えていたんだと思います。

ライブ感は出張料理の一番楽しいところです。その場の雰囲気に合わせて料理が作れる。料理の仕方や味付けも顧客との会話で変えることもできるんです。

出張料理の大変なところはどんなところですか?

毎回アウェイというところですね。キッチンも違うし、お皿もそろってたりそろってなかったりします。確かに大変ですが、楽しめるんです。今日きついなーとか、行った瞬間に、今日はやられそうだなとか、スムーズにいきそうとかすぐにわかります。そういうのが毎日毎日ある。それはすごく大変ですが楽しい。出張料理の醍醐味と言えると思います。

17499605 1413596318663474 451835436 o

工夫しているのはどんなところでしょうか?

スタンスとしては、基本的には自分がメインではないとしています。ホスト(発注されたお客様)のお宅に行くことが多いのですが、そのホストがお客さんを呼んでおもてなしや接待をする感じなので、自分がメインではなく、ホストのサポート役だと考えています。だからあまり前に出ないようにという心掛けてます。もちろん時と場合によっては、前面に出ることもありますが基本的にはホストのお手伝いを、ということを考えてます。当日お会いして、温度感を見ながら判断していきますね。

後はなるべく、料理の中に一つ以上は今までに食べたことがないようなものを入れるようにしてます。初めてのお客さんは特にそれをやってます。狙いは驚きを持ってもらうためです。もちろんお客様がどんな反応をするかな、というのは気にしてますね。

出張料理をやっていて失敗談はありますか?

この仕事してれば誰でもあるかもしれませんが、訪問後に荷物を開けたら、食材がない!ということがありました。塊肉だったので、スーパーとかで絶対売ってないものです。正直青ざめましたね。ただ、たまたま訪問先が自宅から近かったので、これならなんとかタクシーで間に合うと考え、タクシーを飛ばして家に帰り、事なきを得ました。

お店と出張料理のスキルの違いはありますか?

レストランで働いていると、特に有名店だと、お客さんに出すレベルは盛付けも含めて、全てにおいて95点以上が求められます。

それを出張料理人がいろんなお宅でやろうとすると、火加減とかガス設備が違うので、毎回同じものは出せないんです。でもお客さんの環境の中で90点以上のものを提供できるというスキルが必要になってきます。

そして臨機応変な対応。作業台が狭いとか。冷蔵庫の上とかを綺麗に拭いて、ものを逃がせる場所を作ったりとか。いろんなところを綺麗にして使える様にするとか。その場所でできる最高のものを出す。完全にレストランクオリティーではないですが、かぎりなく近いものを出すということが必要になってきますね。

働き方の違いはありますか?

1日に行けて2組。1件1件に対する集中の仕方が違います。レストランだと一気に何組も来ます。いろんなオーダーやりながらになりますが、その食事のためだけに料理を振る舞うのが出張料理です。お客さん1人1人に対する集中力が違いますね。

あとは、ロスが限りなく少ないので、同じ金額でもいいものを使えるという部分もあります。

17500574 1413596341996805 1098099313 o

出張料理人はご自身のキャリアパスの中でどんな位置づけにありますか?

この仕事は受注生産という形になるので、結構時間的には自由に仕事をすることができます。レストランだと休みは定休日かシフト制だとみんなの意見聞きながらです。出張料理だと、休みたい時に休める。働きたい時に働く。もちろん仕事があればにはなりますが。

そうすると、料理以外のことにも関心が持てるようになります。趣味をやる時間も持ちやすい。あとは家庭ですね。子供も小さいので、土曜日に運動会があったり、発表会があったりとか。そういうの気兼ねなく行ける。スケジュールは自分であければいいですから。

編集注)高野さんは自転車を趣味の一つにされています。

料理人として独立する前にいろんなお店を見るというのももちろんいいんですが、どうしても日々の業務に追われることになります。そうではない働き方もできて面白い。

今後も出張料理は活動のベースにするけど、いずれは店を持ちたいというのはあります。そのためにも出張料理を通じていろんなスキルアップはしてると感じてますね。

出張料理をやっていると、いろんな働き方ができる、もしくは求められます。例えば、この間はハンバーガー80個頼まれました。オーダーに応じていろんなことをする必要が出てきて、それを自分の中で考えながら、組み立てていかないといけません。レストランだとそういったことはできません。お客様の注文は非常に多岐に渡るので、対応力も磨かれます。お客様のオーダー次第でやることがどんどん変わっていくんですね。

最近出張料理人が増えてきた感がありますが、何か感じている背景ありますか?

ネットが発達して、スマホでオーダーやコミュニケーションが非常に手軽にできるようになったというのは大きいでしょうね。あと、グーグルマップ。これがなければ、お客さんところに行くこともできない。毎回行く前に調べてます。ネットの発達は確実にあると思う。

実際に、自分もスマホから返信してます。移動時間に簡単な受け答えだったら、スマホですぐにやってしまっていますね。

出張料理人として喜びを感じるのはどんなところですか?

新規のお客様の場合、喜ばれ方がやはり新鮮です。全部1人でやるから、その喜ぶ姿、声をその場で聞くことができます。そういうのを味わうとやめれなくなりますね。まさにライブ感。作ったものをすぐに出せると、食べた人の反応もすぐわかります。感動の現場にいることを実感することができます。

これがレストランだとどうしてもキッチンとホールと別れてしまいます。全部自分でやるわけにはいかないわけです。特に自分が働いていた規模感のお店だと、キッチンはお客さんから見えないところにあります。だから、お客様の反応はホールスタッフの人が伝えてくれる。挨拶で出ていくのはグランシェフくらいのレベルでないとできないですから。

将来的に自分でお店を持つときも、お客様の反応がわかるような形にはしたいと考えてます。

Dsc 0012

これから出張料理を始めたいと思っている人たちにメッセージはありますか?

ただ単に料理が得意とか、そういったことではなく、料理を通じてお客様とのコミュニケーションをとれる場なので、そういったことをやりたいと思っている人にはおすすめです。

単に技術を高めたいだけ、というのとは異なります。1人1人がブランドになっていく。レストランだとお店単位になってしまいますが、このお店に行こうから、あの人に頼もうということになってくるので、自分を売り込みたいという場合に是非チャレンジして欲しいですね。